庭の観察記録
身近な自然の観察記。すぐそこにある自然を通じて、生物の多様性と神秘を味わい、クォークから宇宙まで想いを馳せる。
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天気予報は当たらない。これはもう仕方がない。

もちろん、まったく当たらない訳ではなく、おそらく、当たるほうが圧倒的に多いだろう。雨が降らないといったのに、降ったりするとダメージが大きいので、いつもは当たっていても当たらなかったときのイメージが大きく、天気予報は当たらないとインプットされる。そういう点でも分が悪い。

天気予報は当たらない。もっと正しくは、天気予報は完全には当たらない。そもそも当たらないから「予報」なのだという言葉の定義はさておき、ここでは、理論的に当たらないということを簡単に記しておく。

天気予報が当たらない理論的な根拠は、一言でいえばバタフライ効果である。

私がはじめてバタフライ効果という名前を知り、深く感銘を受けた本からそのまま引用しよう。

現在の天候モデルでは、60マイル四方という細かいますめを使っているのだが、それでもなお人工衛星や地上測候所からすべてを見るわけにはいかないから、出発点のデータの、あるものはどうしても推測に頼る必要がある。そこでその間隔をうんと縮めて、地球上1フィートおきにセンサーを据え、高さ1フィート間隔で大気圏のてっぺんに至るまでセンサーを備えつけたとしたらどうだろう。そして各センサーは温度、気圧、湿度その他気象学者の注文しだいの量を正確無比に測定してくれるものとする。今正午きっかりに極めて強力なコンピューターがデータをみんな集め、そして各所で12時01分に起きること、12時02分、12時03分に起る変化を計算するとしたら、どういうことになるだろうか。
 驚いたことにそんなにしてまでもニュージャージー州プリンストンで、1ヵ月後に日が照るか雨が降るかをコンピューターで予測することはできないのだ。正午に平均値からほんの僅かばかりはずれた何かが、センサー間の空間にかくれているとすると、12時01分にはそのずれが、すでに1フィート先にわずかな誤差を生じはじめ、その誤差は先にいくにしたがってみるみる10フィート規模にふくれあがり、ついには地球サイズにひろがってしまうのである。『カオス---新しい科学をつくる』ジェイムズ・グリック著、新潮文庫



ちなみに1マイルはおよそ1.6キロメートルで、1フィートはおよそ30センチメートルである。

さて、「平均値からほんの僅かばかりはずれた何かが、センサー間の空間にかくれているとすると」とあるが、たとえば、その何かとして、センサー間を蝶(バタフライ)がひらひらと舞うとする。そうするとわずかばかりの誤差がつもりにつもって大変な差になるというわけである。別にバタフライではなくて、ため息でもいい。今これを読んでいるあなたが、「そんな馬鹿な!」と叫んだり、ため息をついたり、深呼吸をしたりすると、そんな呼吸一つひとつもが全世界の未来の気候に影響を与えるのである。あなたがため息を我慢すれば、10年後の異常気象は防げるかもしれない!?

天気予報や予測は、長期と短期、大域と局所等によって計算の仕方等異なるが、いずれにせよ、一筋縄にはいかないものである。

さて、カマキリの卵である。カマキリの卵が高いところに産みつけられるとその年は大雪になるというまことしやかなうわさがネット上でも流れている。テレビでも放送されたという。私も酒井与喜夫著『カマキリは大雪を知っていた』は読んだ。著者は実によく調べているし、その姿勢には頭が下がる。研究内容もとても興味深い。しかし、天気の予測がいかに難しいかをぼんやりとでも知るものにとっては、相当の証拠を突きつけてもらわねば、到底承服できる結論ではない。著者自身、少なくともその論文の中で(そこが本に収録されている)、補正の仕方で結論が変わり得るとしている。他に追試をやっている者もおらず(いたら教えてください)、信憑性はきわめて低い。

昨年末から今年にかけての大雪について、そういえばカマキリの卵が高いところに産みつけられてあった、というのはたいてい後付けである。きっと検索すれば、そういうブログがいくつも出てくることだろう。たった1つ(または数個)の卵でそのようなことは予測できない(※)。著者自身は膨大な数の卵を調べている(だから頭が下がる)。さらに40年も研究している(これまた頭が下がる)。しかし、悲しいかな、ここで忘れてはいけない決定的な事実がある。40年ということは、まだ、たった40回しか検証されていないということである。40回のうち、当たり外れはどれくらいあるのか、それについても統計的にきちんと検証されなければならない。本当に面白い研究だと思うが、いかんせん、第3者のデータがない。

結論:天気のはかなさとデータの不足でカマキリの卵の高さと積雪量に関係はあるとは断定できない。なお、古くからの言い伝えはやっぱり正しかったとか、昔のヒトはよく自然を観察していたと言うのもこういう話であわせてよく出てくるが、間違っていることも多いという事実をけっして無視してはいけない。

(※)ちなみに、うちの敷地にあるコカマキリの卵、一昨年のものは高いところにあり、昨年のものは低いところにある
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酒井與喜夫著, カマキリは大雪を知っていた. (社)農山漁村文化協会 人間選書2
2006/10/01(日) 18:21:09 | 自然観察者の日常
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